2017年3月13日月曜日

「石原たたき」という小池都知事の政治センス



築地市場の豊洲への移転をめぐって、小池百合子・東京都知事が追及のほこさきを石原慎太郎・元知事に向けている。小池知事がどのような政治センスを持った人物なのかがうかがい知れるという意味で、この戦術は興味深い。

政界を引退した石原氏をターゲットにしたことは、”ジャングルの掟”にしたがえば、これほど正しい照準の合わせ方もないのだろう。

ひとつにはマスコミ対策である。石原氏は知事時代をとおして、歯に衣着せぬ物言いを貫き、時には歴史認識などをめぐって記者会見で質問した記者を、逆に質問攻めにしてつるし上げるなど、マスコミに対して上手に立ってきた。しかし、いくらメディアに批判されようとも、選挙をすれば石原氏は当選する。これほど、マスコミが扱いにくい人物もなかっただろう。

だから、「小池 vs. 石原」ということであれば、これまで石原氏にやられる一方だった一部のマスコミは、なんらかのかたちで小池氏の肩を持つだろうと計算できる。少なくとも、石原氏を全面的に擁護しようというマスコミは現れにくい。石原氏の主張に近い立場を取ってきた産経新聞でさえ、小池氏の連載を載せているくらいで、石原氏の側には立ちづらい。石原氏という”嫌われ役”を狙えば、マスコミ受けはする。

もうひとつは、国政を見越してのことである。小池氏が国政に影響力を及ぼそうと考えていることは明らかで、月内には、自身が率いる地域政党に国政の勉強会を立ち上げるという。

石原氏は保守派の政治家としては重鎮であり、いまや「一強」を誇って怖いものなしの安倍晋三首相ですら、国会答弁では極めて低姿勢で丁重に扱った。最高権力者である首相ですら、邪険に扱うことができないのが石原氏である。

つまり、仮にトーナメント表があるとすれば、小池氏が石原氏を追及して負かすことができれば、もうこれ以上の相手は、現代の日本の政界にはいないということだ。言葉を換えれば、政界の主導権を握りたい小池氏にとって、石原氏は”ラスボス”に近い存在であり、ファミコンのスーパーマリオで言えば「8-4」の最後に出てくるクッパだということだ。

こうして考えると、小池氏が戦いの相手として石原氏を選んだことは、とても合理的だと言える。

しかし、この戦術が最後までうまくいくかどうかは分からない。完成してしまっている豊洲市場への移転を、直前になって停止させたことは、民主党政権が八ッ場ダムの建設と中止したこととあまり変わらないようにも見える。そして、退任した老政治家を表舞台に引きずり出してきて不正を暴くという手法は、まるで韓国の政界を見ているかのような錯覚に襲われる。

天皇陛下がご高齢のために退位されたいとのご意向を示された時には、どの世論調査でも国民がほぼ一致して賛成し、マスコミには陛下を気づかう声があふれた。さすが日本は、心づかいに満ちた優しい国だなと、その時は思ったものだ。それを考えると、反論のための記者会見を開かざるをえないほど、石原氏をわざわざ追及する小池氏の戦術に、見苦しさをおぼえなくもない。政治に情けは不要ということだろうか。


Main Photo by ニュース 2016 NEWs [CC BY 3.0], via Wikimedia Commons




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